第50章 ❤︎ 何年たっても特別な日は変わらない 岩泉一
容赦なく与えられる愛撫に肩に掛かる一君の荒い息遣い。そんな気なんて全然なかったのに徐々に体が熱くなっていく。
「今すぐ挿れてぇんだけど…」
「……ぇ…もぅ?」
「待ってる余裕ねぇ」
太ももに擦り付けられる感触に薄々は気付いていたけど、こんなに余裕のない一君見るのも初めてだった。脱がされる下着、挿れられた指が荒く掻き回せばそれだけで一気に感情が高ぶる。声を出せない苦しさよりももっときつい快感を得たくて体は疼いた。
「このまま後ろから挿れっから」
「………うん」
「あんま声出すなよ?」
「…出せないよ」
誰も気付きませんようにと願いながら、きゅっと目を瞑り前に屈んでお尻を上げる。充てがわれる瞬間は思わず吐息が漏れてしまうくらいにゾクゾクして、奥まで届くように重ねた体は互いの体温を共有していく。
「…っ、はぁ、ぁ……やべ」
吐き出した余裕のない言葉が切なくて甘い感情を溢れさせる。好きという言葉も愛してるの言葉もないけど、求められる事に体は悦んで声にならない声が小さく漏れた。
「自分勝手で…悪い」
「…ん、…大丈夫」
「ほんと余裕ねぇわ。…くそっ、ヤバい…」
揺さぶられる体。一君の余裕のない声と切なく聞こえてくる吐息が与えられる快感を加速させていく。腰を固定されたまま突かれる度に奥の奥まで犯されていくみたいだった。
しばらくして奥で熱いものを受け止めた後、ぴったりとくっついた肌がじんわりと湿って浅く荒い呼吸音が静かなキッチンに消えていく。どちらからともなく重ねたキスはお互いを慰めるように優しく甘いものだった。
余韻に浸るようにぼーっとする意識の中で一君に抱えられて二階の寝室まで運んでくれた。ベッドに寝かされてからは頬に唇に何度もキスをされてぼんやりする意識の中で“愛してる”の言葉を聞く。
そして眠りに落ちてしまう前に温かい腕の中へ潜り込んだ。