第50章 ❤︎ 何年たっても特別な日は変わらない 岩泉一
「あー、5分前だ。遅れるとお小遣い減額されるから帰らなきゃ」
「明日も早いしな」
「そうだね…」
「朝、迎えに行くから」
「うん、じゃあおはようのメールするね」
「頼む」
体を離そうとしたとき、大きな腕は離してくれなくて私はまた一君の腕に包まれる。
「一君?」
「あー…、悪い」
「どうしたの?」
「……もっかい…、いいか?」
もしかして照れてる?顔は見えないけどいつもより早い心臓の音に、照れる一君を想像してはついはにかんでしまう。
そして少し背伸びをして、目を閉じる。
月明かりが照らした二人の影がゆっくりと重なっていった。
“一君、お誕生日おめでとう”
唇を重ねる瞬間にそう心の中で呟いた。
fin*