第49章 ❤︎ 甘い夜と嫉妬に揺れる夜 岩泉一
▷▶︎ 甘い夜編
≫夢主side
毎月の事だけど貧血気味で思うように体が動かない夜。昼間の緊張感から解き放たれた体は限界で疲れと調子の悪さが一気に押し寄せる。いつもなら一緒に過ごすはずの時間も今夜はお布団がお相手。
「悪い。…起こしたか?」
声のする方へ視線を向けると心配そうに見つめる一君。大きな手はそっと額を撫でる。
「大丈夫」
「寝る前は真っ青だったぞ。…今は少し顔色もマシだけど」
「今回予定より早くきちゃったみたいで。だからそのせいかな?眠気も酷かったし」
「晩飯食ってから寝たまま起きてこないからさすがに心配した」
「今何時?」
「23時過ぎ」
「そんなに寝てたの?」
「このまま朝まで寝かしといてやろうと思ったんだけどとりあえず水飲んでから寝ろ…」
ペットボトルを受けとると〝飲めるか?〟って体を支えてくれる一の手は暖かい。
「ありがと…。常温なのが優しい」
「体冷えるからな」
過保護過ぎるってくらいに優しい。喉を潤した後、ベッドに腰掛ける一にしがみつく様に抱きついた。
「どした?」
「生理終わったら、…する?」
「なんだよ急に」
「だって…」
決して煽ってるわけじゃない。だって本当は互いが休みの今夜、その予定だったから。一の優しさで高まった感情は空回り。
「…お前は?しねぇの?」
宥めるように後頭部を撫でながら珍しく一の甘えるような声が擽る。
「………する」
「じゃあ終わるまで待つから。お前の我儘ちゃんと聞いてやりてぇけど今は無理すんな」
「ごめん、変な事言って…」
「いや、お前から誘われるのも悪くねぇしな」
「そうなの?」
「そりゃそうだろ?」
「そっか。じゃあ生理終わったら好きなようにしていいからね…」
「ばーか。煽り方が下手なんだよ、お前」
「そんな事ないと思うんだけどな」
「言われなくてもお前が望む以上に抱いてやるから。覚悟だけしてろ」
「相変わらず、格好いいな。一は…」
うるせぇな苦笑する一の唇めがけて触れるだけのキスを贈る。徐々に深くなる口付けは優しく舌先に触れて絡り合う。
「なぁ…。お前は寝てていいからこのまま抱いてていいか?一人でテレビ観ててもつまんねぇし」
「うん。今夜はそばにいて欲しい」
気怠い体は大きな体に包まれて体温を上げる。不思議と痛みもなくて眠りを誘うような穏やかで甘い夜が始まる。
