第41章 恋する細胞 岩泉一
放課後になって、私は担任の先生と残っていた。ここ数日浮かれきっていたせいで、今日受けた小テストは散々な結果だった。まぁテストの存在を忘れていた自分も悪いんだけど、今は補習にある意味救われている…。
「課題できたか?」
「はい。今終わりました」
「なら帰ってもいいぞ」
「ありがとうございました。ご迷惑おかけしました」
「お前が補習って珍しい事もあるんだなぁとは思ったけど」
「すみません。ここ数日バタバタしていたので予習をしていなくて」
「しっかりしろよ。一応受験生なんだからな」
「…すみません。気をつけます」
「じゃあまた明日」
「はい、失礼します」
教科書を鞄にしまって帰る頃には外もすっかり夕日に染まっていた。外から聞こえる賑やかな声、それに対照的にため息ばかりの私。言われた言葉、自分の性格、思い出しては情けなくなって泣きたい気持ちになる。
今までも一人でやってこれたのになんで今更…。
岩泉君の優しさに舞い上がってしまった罰なんだろうか。もうこれ以上好きになんてならないから、せめて友だちのままでいたかった……。
キラキラした時間は短かったけど、私にはいい思い出になった。青春らしい事もないままの高校生活だったんだもん、ある意味奇跡だ。さっさと過去形にして、立ち直らなきゃね…。
「終わったか?」
心新たに…と教室から出て私を迎えてくれたのは岩泉君で…、あまりに吃驚してしまって声も出せなかった。
「…補習、終わったか?」
「え、あっ、はい!」
「なんでそんな驚いてんだよ」
「…だっ、て、……部活は?」
「抜けてきた」
「なんで?」
「気になることがあったから」
連絡もせずに昼休み行かなかった事に怒ってるんだろうか。私だって連絡くらいはしようと思った、…でも、出来なかった。真っ直ぐ見つめる視線に耐えられず、俯いたまま何も答えられなかった。