第41章 恋する細胞 岩泉一
昼の休憩を告げる鐘が鳴り、また憂鬱な時間が始まった。親の都合とはいえ高3の5月なんて中途半端な時期に転校してきて、今私は地味にぼっち…。いやむしろ派手なぼっちを見てみたい。ぼっちは元々地味だ。
教室は一気に賑やかになって机を合わせる人、学食に向かう人、そんな人たちを避けるように私も教室から出た。
今日は中庭にしようかな。ちょうど花の咲いている場所が空いていて花を見ながら静かに優雅にお弁当タイム。…と思ったら近くにトイレが…、なるほど人が少ない訳だ。
「もう…、なんでもいいや」
ぽつり呟いても返事をしてくれる人はいない。当たり前だよね…。
ほんとは青城に転校が決まったとき、少しだけ嬉しかった。幼稚園の年少の頃、この近くに住んでいた事があったからもしかしたら私を覚えてくれている人がいるかもしれないなんて思ってたから。ま、今のところそんな人はいなかったけど。
私がもっと容姿端麗で成績優秀、他の人よりも秀でるものがあれば上手くいったのかもしれないけど、なんと言っても地味…。母親曰く不細工でもないけど美人でも可愛いっていう感じでもないらしく、ただパッとしないのだと…。
「そんなのお先真っ暗じゃん!」
母くらい味方になってくれたらいいのに、なんてこった!フォークでさしたミニトマトの種が弾け飛ぶ。でもそんなことはどうでもいい。神様、トマトの神様、彼氏が欲しいなんて高望みしないから、せめて友だちくらいは、、、欲しいっす。
そよ風はふんわりと夏の匂いとなんとも言えないドブ臭さを運ぶ。一瞬うっと食欲が減退したけど、甘い卵焼きにまた食べる意欲を掻き立てる。
場所を移動しよう…、そう思い一度お弁当を片付ける。