第40章 ❤︎ 電車の中のハプニング 鎌先靖志
よく晴れた日曜日、いちかとのデートの待ち合わせ場所はいつもの駅前だった。こうやって休日に会えるのは久々で俺もこの日を心待ちにしていた。まだ見ぬ一個下の彼女の私服姿を想像すれば自然と笑みが溢れる。
それから数分後に可愛く着飾ったいちかを見つけると想像以上に胸は高鳴って鼻の下が伸びそうになるのを我慢した。
「ごめんなさい。駅、人がすごくて」
「そういやいつもより人が多いなとは思ってたけど」
駅の改札口に近づくに連れて人が何倍にも溢れているような状態だった。いつもと変わらないはずの場所が人で埋め尽くされているのを目の当たりにして、俺は思わず絶句した。
「おい、なんだよこの人だかりは…」
「すごい人ですね」
「ここ、……東京じゃねぇよな」
「はい。宮城です」
「だよなぁ。…なんかイベントでもあんのか?」
「…あ、そういえば今日アイドルのコンサートがあるって聞いたような気がします」
「それでか…」
「先輩知らないんですか?今すごい人気がある日韓のアイドルグループ」
「いや、知らねぇ」
「CMに映画に引っ張りだこなんですよ?コンサートのチケットもなかなかとれないって友達が言ってました」
「つってもなぁ、俺アイドルに興味ねーし」
「そうですよね。逆に先輩あんまりテレビも見ないですもんね」
「まぁな…。そんな暇もねぇし」
「……ああでも今、宮城にアイドルがきてるんだぁ…。そう思うとすごいなぁ…」
「なに?いちかも行きたいのか?」
「まさか。私は今日の先輩とのデート、すごく楽しみにしてたんですからコンサートより断然デートです!」
そう主張するようにドヤ顔で笑ういちか。正直、今ここに集まっているどの女たちよりもいちかが一番可愛いと自信を持って言える。