第39章 ❤︎ 幸せって多分、こんな時間 昼神幸郎
俺の腕の中ですーすーと規則的な寝息をたてている いちか 。柔らかな髪の毛に触れて腕に収めれば甘い香り。
現在の時刻は午前2時48分。もう少し眠ろうか。それとももっと深く、バニラの香りに包まれようか。
「…いちか 」
ここ最近は互いに忙しくすれ違いの日々だった。会えない時間も頭に浮かぶのはいちか のことばかりで、今何をしているのか、俺のことを思ってくれているのだろうかと不安ばかりが積もる日もあった。だけど腕の中の彼女はそんな不安を取り除いてくれるかのようにとても温かい。
「いちか」
まだ夢の中の彼女の額にキスを落として甘く囁いてもう一度名前を呼ぶ。この瞬間の彼女すべてが愛おしいとさえ感じる。
「………ん…」
もぞっと微かに体が動き、ゆっくりと開かれる瞼。色素の薄い瞳に俺が映る。
「…あ、れ?」
「ごめん…、起こした?」
「あ、うん。……平気。まだ夜中?何時、今?」
「今…、は3時前かな」
「そっか…。じゃ、まだ眠れるね」
「いちか、明日早いんだっけ?」
「あー…うん、…ん?そういや急遽明日は勤務交代でお休みになったんだ。ごめん、言い忘れてた」
「え、そうなの?俺も明日は一日オフだよ」
「じゃあ明日は一緒に過ごせるね」
嬉しいな、と目を細めて笑う。このままキスしたい、でもいちかの甘い吐息なんて聞いてしまったら最後、そのまま抱いてしまいそうだから抱き寄せるだけにしておく。嬉しいなんて思ってもなかったいちかの言葉に嬉しいのは俺の方で、体も疲れているはずなのに先ほどまで眠たかったはずなのに頭は冴えていく。貴重な二人の時間だからこそもっと近くで、こうやって触れていたい。