第35章 ❤︎ HOW TO SEX 木兎光太郎・赤葦京治
≫夢主side
27歳、アラサー。独身、彼氏あり。
私、今、最大のピンチを迎えています。
都会の空にまんまるの月が浮かんでいる。明日の休みを控えた街もなんとなく浮き足立ち、久々に残業のない華金を一人で満喫していた。
飲食店からは食欲をそそる香り。今夜は何を食べようかななんて考えていた時だった。
「いちか…?」
ふいに名前を呼ばれ歩みを止めた。私のことを下の名前で呼ぶのは最近できた恋人以外には一人しかいない。頭に浮かんだ数年前の面影と目の前の人物は完全に一致した。
「けい……じ?」
「よかった人違いじゃなかった。なんとなく似てる人がいるなとは思ったけど本当にいちかだとは思わなかった」
「私もびっくりだよ。久しぶりじゃん、元気にしてた?」
「それなりにね。いちかは変わらず元気そうだね」
「うん!元気にOLやってるよ。京治も頑張ってるみたいだね。秋紀から聞いてる」
「そういえば…、二人って」
「うん、そう。付き合ってる」
「高校の頃はそんな素振り見せなかったのに意外…、でもないか。で、今日は一人?」
「秋紀は仕事。営業職だし金曜日の夜なんてほどんど一緒にはいられないから。…京治は?」
「今から木兎さんと飲む予定」
「そうなの!?えー、いいなぁ」
「じゃあいちかも来る?」
「え、私も行ってもいいの?」
「前に木兎さんに会った時、いちかに会いたがってた」
「本当に?先輩、今じゃ超有名人になっちゃってなんか雲の上の存在みたいに感じてて連絡もできないままだったんだよね」