第33章 ❤︎ コーヒーの香りと君の寝顔 東峰旭
先に目を覚ましたのは俺だった。相変わらずのいちかは起きる気配は全くなく熟睡中。いちかを起こさぬようそっとベッドから出て、俺はもう一度コーヒーを煎れ直す。コーヒーの香りが再度部屋を包み、なんともいえない幸福感と満足感に満ちる。
ベッドサイドに座るとシーツの中で何かがもぞっと動く。布団の隙間からいちかの手が何かを探すように動いて何気なくその手を握った。グイッと布団の中に引き戻されて抱きしめられる。
「おはよ」
「おはよ。まだ寝る?」
「どうしようかな」
「もう一回コーヒー煎れたけど飲む?」
「甘い?」
「いちかのは特別に甘くするよ」
「飲む」
「じゃあ、もう一回起きようか?」
「うん。旭、抱っこして?」
「はいはい。じゃあ俺に捕まって?」
俺に手を差し伸べるいちかはまだ寝ぼけ眼。その無防備さが愛おしくて俺はその小さな唇に何度もキスをした。
俺の彼女はコーヒーはミルクと砂糖たっぷりがお好み。二人で過ごす休日の朝は甘いコーヒーと甘い君が欲しくなる。
fin*