第33章 ❤︎ コーヒーの香りと君の寝顔 東峰旭
聴き慣れたスマホのアラームが夢の終わりを告げて現実へと引き戻す。明るい日差しが部屋の中を照らし、爽やかな朝を告げる。このぼんやりとできる時間は至福の時間だけどふと脳裏に過ぎる昨夜の出来事。それは思い出すだけど頭がずんやりと重くなる。とにかく散々だった。
練習後の飲み会。酒こそそこそこに抑えたけど酔った先輩たちの絡みが酷かった。腕相撲から始まり、最後には野球拳…一体男の裸を見ることになんの得があるのだろうか。
「あぁ…。頭が重い…」
だけどそんな重い気持ちも隣で眠るいちかを見れば不思議と癒される。むにゃむにゃと口を動かしてまるで何かを食べる夢でも見ているのか無防備な寝顔を俺だけに見せる。
「可愛いなぁ…」
何年一緒にいてもいちかほど可愛いと思う対象はいない。鼻の下だって表情筋なんて伸びまくってる。こうやって好きなだけ眺めることが俺にとっての癒しだった。
大地やスガからは早くプロポーズしろと急かすし俺だってその気はあるけど、もう少しこの恋人同士の甘い時間を過ごしていたいなんて考えは甘いんだろうか。
「結婚しよう……か」
眠っているいちかにはこんなに簡単に口にできるのにいざとなれば言葉は喉から先には出てきてくれない。でもいつかいちかに届くようにと胸の奥へ仕舞い込んだ。