第32章 君の手をとりたかった理由　黒尾鉄朗

「面倒くせぇ」

部活終わり。研磨と帰路を共にしながらため息交じりで呟く。今日は調子も良くてスッキリしてんのに帰ってからの残された課題を思い出すと気が重い。

「なにが？」
「ちょっと面倒事」
「なに？」
「体育祭の実行委員に選ばれた」
「へぇ、いいじゃん。クロ、そういうイベント嫌いじゃないでしょ？」
「嫌いじゃねぇけど、委員とか面倒じゃん」
「どうせいつもの他所行きのへらへらした顔して引き受けたんでしょ」
「だって担任からのお前しかやれるやついないからって…。…んで研磨は？今年何にでんの？」
「大縄飛びと……、後は忘れた」
「いいよな、気楽な奴は。前日の準備だけならまだしも、クラス全員の割り振り決めろとか言われてさ…」
「全員？なんで？普通はHRとかで皆で決めるもんじゃないの？」
「そうなんだけど、俺んクラスなんかまとまりなくて。担任もそれ分かってるから俺に回してきたんだろ？俺の言うことなら皆従うからとか適当な事言いやがって」
「ああ…、なるほど」
「明日までの期限だって。運動部の奴とかなら適当に振れんだけど、特に女子の、ほら、大人しい子らなんてどう振り分けたらいいのか分かんねぇじゃん。そもそも絡みもないし
「それこそ適当でいいんじゃない？たかが体育祭だし」
「そうは言ってもなぁ。最後だしな…
「じゃあ真剣に考えてあげなよ。クロのクラスのことは知らないかから俺には関係ないけど」
「相変わらず冷てぇの」
「だってそうでしょ？」
「これも人気者の悲しい役目だよな…」
「目立ちたがり屋なんだから仕方ないじゃん。ある意味自業自得」
「デスネー。とりあえず帰って適当に割り振るわ」
「ま、頑張って」

そう言って研磨と別れた後、さっさと夕食と風呂を済ませて部屋に籠もる。

プリントには種目と空白の欄。リレー、騎馬戦、借り物競走、大縄跳び、etc.…。どの種目に出てもいいんだけど運動部は２種目にしか出られないってのがネック。

皆平等にって言っても得意不得意あるもんなぁー。

運動部を優先して種目分けして終わった後は適当に名前を入れて空欄を埋めていった。毎年楽しむことが最優先されるイベントなだけに俺もそこまで力を入れて取り組む気もなかった。