第23章 ❤︎ PROVOCATION 牛島若利
「…いちか?」
若利のネクタイを引っ張り、強引に唇を重ねた。
触れた唇を逃さないように吸い付くように口付けていく。呼吸が苦しく感じるのすら愛おしく感じて満たされない欲だけが加速する。
「……もう、………待てないって言ったら?」
真っ直ぐに目を見て、若利の手を自分のスカートの裾へと導く。私の行動に驚いたような表情を見せるけど、沈黙の時間だって目を逸らさない。
「ダメだ…」
一瞬冷たく睨むように見下ろし手を払いのける。違う、そうじゃないの。待っているのはyesの答えだけ。
「家までなんて待てない」
「…なら、いつまでもこんなところにいないでさっさと帰るぞ」
そう言うと木陰に並べてあった鞄に手を伸ばす。
「…じゃあいい」
「何がだ?」
「私、ここで一人でしちゃうから…」
「何を言っているんだ?」
若利は目を見開いて私を見下ろすから、あえて挑発するようにシャツの釦に手をかけ一つずつ外していく。淡いピンクの下着がチラッと見えたところで引っ張られるように抱きしめられる。
「こんなところで…っ」
“誰かに見られたらどうする?”と苦しいくらいに抱かれる。薄いシャツごしに聞こえるのはいつもよりも早い鼓動。
「だって、相手にしてくれないんだもん」
「時と場所を考えろ」
「…でも、………若利だってドキドキしてるじゃん」
「当たり前だ。心臓に悪い…」
「じゃあいいじゃん」
「何がだ?」
「もっと、心臓に悪い事しよーよ」
むせかえるような暑さに汗が背中を伝って流れていく。若利と見つめ合った一瞬だけ、二人の時間が止まったような気がした。
“こっち来て”と手を引いて、最近できたばかりの公衆トイレの個室に入る。コンクリートでできたその場所は外よりもずっと涼しくて汗ばんだ肌を冷やす。