第23章 ❤︎ PROVOCATION 牛島若利
“若利…”
喉はもうカラカラで、彼をじっと見つめるだけで体は熱くなった。
「したい…」
外は煩いくらいの蝉の声だけが聞こえる。午後の日差しを避けるように木陰に入ったけど、密着するように寄せた体はじんわりと汗ばんでいく。
「今すぐしたい」
上目遣いに真っ直ぐに見つめて、ストレートに伝える。どうしてこうなったのかは分からない。たったキス一つでのぼせ上がってしまったのか引くに引けない状態の私に若利は呆れたように短くため息をつく。
「何だ?この暑さでのぼせたのか?」
私はじっと見つめたまま首を横に振る。本気だよって、握った腕に力を込めて…。
「…お前も分かっていると思うがここは外だ。ダメだ」
「どうして?」
「帰ってからでいいだろう?」
「…でもねっ、私」
自分でもわからないけど、でもどうしようもなく触れたくて、触れて欲しくて。今だって泣きそうになるくらいこの距離がもどかしく感じる。
私を見つめたまま少しの間をおいて、困ったようにため息をつく。
「……後でな?…家に帰ったら嫌というくらいに相手してやる」
そっけない態度でも声は優しくて若利の言うことは真っ当だ。
でも私が欲しいのはそんな優しい若利じゃない。“帰るぞ”と手を取るけど、私は手を振り解いて抱き着いた。