第22章 ❤︎ セックスレスに奮闘する鉄朗パパ
今夜は子供もの実家に初めてのお泊まりでいつもなら慌ただしく過ごしているこの時間も穏やかに静かに流れていた。俺もいちかも明日は休みで子供も昼までは帰ってこない。
「大丈夫かな?」
「さっきの電話じゃご機嫌だったじゃねぇか。おもちゃ沢山買ってもらったみたいだし」
「そのまま疲れて寝ちゃって夜も泣かないといいんだけど」
一人落ち着かない様子でスマホを弄りながらため息をつく。そりゃ俺だって心配だけど向こうからは何があっても明日まで絶対に迎えに来るなって言われてるし。
「大丈夫。向こうは子育てのプロだから。俺たちは久々の二人きりの時間なんだから楽しもうぜ」
不安そうに笑ういちかを抱き寄せる。嫌がられるかなって一瞬戸惑ったけどここで引き下がったら今夜のチャンスはない。
「そうだね。こうやって鉄朗と二人きりなのって慣らし保育以来?」
「あんときは二時間だけだったけどな。飯食ったらすぐお迎えだったしな」
「でもあのランチデートも楽しかったよ。鉄朗は土日休みじゃなかったりするし二人で平日過ごせるなんて」
「そばにいてやれなくてごめんな。いつも感謝してんだけどちゃんと伝えてなかったよな」
「そんな改らなくてもいいのに。私だって感謝してるもん」
甘えるような口調に気持ちは高まる。母親として頼もしく見える背中だってこうやって俺の腕の中で抱けば相変わらず華奢な体で甘い感覚に包まれる。
「久しぶりでどうやって過ごしていいか分からないね」
「じゃあ今夜酒でも飲む?ビールだけど」
「いいのかな?」
「お義母さんも言ってただろ?泣いても電話しないし迎えに来たりしないでって」
「帰り際にも言われた。あんた心配性だからって念を押されて」
「なら甘えさせてもらおうぜ」
「そうだね」
「なんか適当につまみ作ってくるから飲もうぜ」
「なら私何か作ろうか?」
「いいって。こんな時くらいゆっくりしてろ」
席を立とうとしたいちかの肩を撫でてソファに座らせた。いつもなんにも言わなくてもつまみが用意されてあるし、改めて思えばそれって俺のこと考えてくれてるからだよな。ちゃんと整えられた食器棚、愛用しているエプロン、ありふれた光景の中でキッチンから見えるの後姿に愛おしさが込み上げてくる。