第19章 不器用な優しさ 瀬見英太
そして校内へ入った時、英太が急に立ち止まる。
「英太?」
「………昼間はごめん」
それは思いがけない言葉だった。
「あ、…あれは私が悪いよ。ちゃんと周り見てなくて英太にも迷惑かけちゃって…、むしろこっちがごめんなさいだよ」
「俺が手伝ってくれって頼んだのに、あんな言い方なかったなって」
「いいの、ほんとに。私が悪いんだから気にしないで」
「あの後、ボトル洗いながら一人で泣いてただろ?」
「……知ってたの?」
「あの後、あんな言い方なかったんじゃないかって天童に言われて気付いて、後追いかけたら偶然…」
英太の言葉に胸がズキンと痛んだ。迷惑をかけないようにってただそれだけだったのに、自分が不器用な所為で関係ない人まで巻き込んで…。ほんと何やってんだろ。
「ごめんね」
「いちかは謝る必要ないだろ?」
「英太の邪魔しちゃった…」
「してないから。朝のチーム戦あっただろ?あれでサーブミスが結構目立ってそれで結構凹んでて、俺もいちかにいいところも見せられなかったし」
「そんな事なかったよ。私は間近で英太のプレー見れて嬉しかったよ。こんな風にいつも頑張ってたんだって…」
だから英太を支えたいって気持ちも大きくなったの。
「なのにね…、ドジばっかりで嫌になる」
「そんな事ないから。慣れないことばっかさせて俺も悪かったなって」
「ねぇ、英太…」
「何?」
「明日からも手伝い行って良い?」
「当たり前だろ?…いちかが嫌じゃなかったら」
「嫌なわけないよ。英太のそばでいられるのに」
「連休中はずっと練習だったし会えないと思ってたから、ほんとは手伝いに来てくれるのは嬉しかった」
気が付けばいつもの優しい英太に戻っていた。そんな風に思ってくれていて、嬉しい…というよりホッとした感じ。