第19章 不器用な優しさ 瀬見英太
ゴールデンウィークも初日。私は英太に言われるがまま大荷物を抱えて体育館へ向かっていた。まだ日の昇り始めた早い時間。肌寒い空気に薄暗い空が非日常の始まりを告げる。
門には英太の姿。真っ直ぐに見つめる横顔は凜々しくて、高校最後の一年だから意気込みも尚更だろう。
「おはよう、英太」
「はよ。…ちゃんと来たな」
「うん、昨日は緊張で寝るのが遅くなっちゃったけど」
「せっかくの連休なのに悪かったな」
「特に予定もなかったし大丈夫だよ。でも私なんかが手伝っていいの?逆に迷惑にならない?」
連休中の合宿は人手が足りないらしく英太に手伝って欲しいと頼まれてやってきたのはいいけど…。マネージャー業は未経験だし、気遣いだってどちらかと言えば下手くそで極めつけは鈍くさいときた。もちろんサポートしたい気持ちは溢れてるけど。
「多分、ドリンクの準備とかそういう雑用メインだと思うから」
「それくらいなら私にも出来るかな」
「頼むな?」
「うん、頑張るね」
そうは言ったものの、私の予感はこの後見事に的中するのである。
午前のメニューはチームに分かれてゲーム練習、午後からは各ポジションに分かれてポイント練習という流れだった。とはいえすべてが初めての私は緊張しまくりで完全に指示待ち状態、すでに迷惑をかけている感じだった。それでもドリンクの準備に追われながら見えた英太のプレーにドキドキしてついニヤけて
しまいそうだった。
練習の空気にも慣れ午後の練習に入って暫く経った時、私もポイント練習に入ってボールを拾い集めていた。各コート毎に分かれているものの、拾い切れなったサーブボールなんかが時々飛んでくる。
もちろん私も注意はしていたけど、つい英太のサーブに見とれてしまって後ろから飛んでくるボールに気がつかなかった。