第17章 ❤︎ ぼくなつ 木兎光太郎
あれから二年後の夏…、七月。
船から見える景色は変わらないまま。
「いちか、もう忘れもんないよな?」
「あってももう船に乗っちゃったし、忘れ物があるなら後でお母さんに送ってもらうか京治君のお店に取り寄せてもらうかしてなんとかするよ」
「最近家族連れが多くなってきたのもあってベビー用品もある程度取り寄せてるから当分は大丈夫だと思う」
「ありがとう。特にオムツなんてすぐなくなっちゃっうし持ってくるのにも限界があったから」
「その辺は俺に任せて。早めに言ってくれたらちゃんと準備しとくから」
「京治君がいてくれてよかっった。光太郎、子守りは出来るんだけどまだベビー用品とかはよく分からないらしくって…。まだ食べられないのにベビーフードとかお菓子とかおもちゃとか沢山買いこんじゃうし」
「だってさぁ、いずれ必要だろ?」
「そうだけど、これからお金もかかるから節約しようって話したところなのに」
「いちかもすっかりお母さんって顔になってきたね」
「そうかな…。まだお母さんになって二ヶ月目だよ?」
「俺もパパ、二カ月目だから。なぁ、なっちゃん!」
生まれてまだ二カ月の赤ちゃんを抱きながら自慢げに新米パパは笑っている。
過去を遡ればあれからすぐに籍を入れて二年間は遠距離恋愛を楽しんでいた。妊娠が分かったのは卒業の少し前で誰にも気付かれずに済んだんだけど、つわりやその他トラブルがあってお産するまでは島には帰れないままだった。