第17章 ❤︎ ぼくなつ 木兎光太郎
「手放すときは誰でも辛いんだから仕方ねぇよ。いちかちゃんはここに来る前にちゃんと気持ちに区切りをつけてきたんだから大丈夫だ。…後は鉄朗君の問題だ」
「……うん」
「…男ってこういう時に弱くって情けねぇもんだから。そこは俺も分かるから、だから鉄朗君のこと許してやってな?」
「鉄朗は最後笑ってたの。昔みたいに優しく…」
「それだけいちかちゃんのことを大切に想っててくれたって事だな」
「……うん」
「俺は鉄朗君みたいなタイプ、結構好き。いつか仲良くなれたいいんだけどな…」
「そんな風に思ってくれるの?」
「え、なんで?変?」
「変じゃないけど……。光太郎さんって心が広いね」
「別に…、だっていちかちゃんが好きになった男なんだから絶対いい奴じゃん。海鮮系好きだって言ってたし」
「昔から優しい人だったの。本当に……」
「じゃあ大丈夫だ。いつかそんな未来がくるから」
「………うん」
鉄朗が願ってくれたように私だって鉄朗に幸せになって欲しい。大好きだったからこそそう思う。
いつかまた会える事があるなら、昔のように笑って会いたい。
「光太郎さん……、もう少し、こうしてて?」
「勿論。放す気なんてねぇから」
零れた涙はゆっくりと頬を伝って落ちる。胸がいっぱいで何も考えられないけど、今は大きな体に包まれて唇に触れる柔らなかな体温に全てを預けていたい。
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