第17章 ❤︎ ぼくなつ 木兎光太郎
しばらくは沈黙だけがその場を包んでいた。
今、私と鉄朗の関係は終わったんだ。
息をする度に痛む胸はその現実をゆっくりと受け入れていく。映画や恋愛ドラマみたいに笑顔でお別れなんて夢のまた夢なんだ…。
「喧嘩を売るつもりはない。だけどちゃんと鉄朗君にも言っておく」
「何だよ…」
「いちかちゃんは俺が必ず幸せにするから…、今はそれしか言えない」
「……当たり前だ。……俺はもうこれ以上何も言わねぇから」
「鉄朗…っ」
「お前にももう会うつもりもねぇから。…今日限りだ」
最後の鉄朗の優しさなんだろうか。私を見て無理して笑うように微笑んでから、静かに席を立つ。
「………んじゃ、俺帰るから。……刺身は最高に美味かった」
「でももう船もないぞ」
「いいよ。その辺で頭冷やすから」
「つってもよ……」
光太郎さんも立ち上がろうとしたその時、すっと襖が開いてひょっこりと京治さんが顔を出す。
「お待たせしました」
「え、京治さん…!?」
一瞬光太郎さんが呼んでたのかなって思ったけど隣で光太郎さんも驚いた顔をしている。