第17章 ❤︎ ぼくなつ 木兎光太郎
「…………フザけんなよ」
「最後まで我儘でどうしようもなくて、本当にごめんなさい」
悪いのは私だ。鉄朗を思えば自分が不甲斐なくて傷つけてばかりで、私が謝ったって納得できないのは分かってる。今は涙を堪えながら鉄朗に頭を下げるしかない。
「……んなもん……、今更になって」
「まぁまぁ頭を上げなよ、いちかちゃん」
「お前が言うな」
「だって女の子に謝らせるの可哀想だし。別れるに至った経緯を考えたら鉄朗君にだって原因があるんだからさ」
「お前に言われたくねぇよ。お前さえ現れなきゃこんなことになってなかったんだ」
「ごめんね。これはもう運命の悪戯ってやつだから許して」
「ムカつくんだよ。お前のそういう態度がよぉ!大体なぁ、こんなボロい民宿でいちかが幸せになれるわけねぇんだよ!」
「確かに俺は経済力はそんなにねぇけどさ、いちかちゃんを一人ぼっちにはさせねぇしここならずっと一緒にいられんだよ。いちかちゃんが望んでんのはそういうことじゃねぇの?」
「確かにいつも一緒に居るなんてことはできなかったけど、俺だっていちかを愛してた。……俺に、何が足りないって言うんだよ……」
知ってた…。鉄朗はいつだって私を優先してくれてたし、言葉の裏にある優しさにちゃんと気付いてた。でも私が私自身のことをちゃんと見てなかった。
「鉄朗は十分過ぎるくらい愛してくれてた。私が甘えすぎてただけなの……。私がもっと大人にならなきゃいけなかった……、それに気付けなかった」
「……だったら俺はお前にどうしてやったらよかったんだ?」
声を震わす鉄朗も涙を見たのも初めてだった。自分を責める言葉以外出てこない。でもそんな言葉を鉄朗に向けたってもうどうしようもない…。