第17章 ❤︎ ぼくなつ 木兎光太郎
そしてお店をでる頃にはすっかり日も暮れかけていた。水平線に夕日が沈んでいくのを生で見るなんて初めて。
「綺麗…」
「今日は特に夕日がでかいな」
「いつもこんな景色見てるの?」
「そうだよ…」
「いいな」
「俺とあかーし以外は皆島出てんだけど、何もなくいからつまらないって。それがいいんだけどなぁ」
「そう思える人って案外少ないんだろうね。なんでも揃ってる都会って楽しいもん」
「たまに俺も遊びにいくけど、そんくらいの楽しみでいい」
「そうなんだ、こっちくも来るんだ」
「買い出しついでってのが多いけど」
「そっか、そうだよね」
「だからこっちの生活だって悪くないよ」
そう笑った顔が印象的だった。古い街灯だけが照らす道を歩いて帰る。生まれも育ちも東京だったのに、こんな光景が懐かしいって思えるのが不思議。旅館からは夕食だろうか、美味しそうな香りが漂ってきている。
最近、まともに食べてなかったもんな。夕食付きにしててよかった。
この一週間でちゃんと生き返らなきゃね。