第15章 ❤︎ 彼女とのセックス見せつけていいですか? 角名倫太郎
「私、どうしたらまた信用してもらえるの?」
「信用してるのは変わらない。単に俺の嫉妬ってのもあるし。……だけどもし侑がいちかに気があるのなら話は別」
「そんなことないって。絶対にないよ」
「だけどゼロじゃない。可能性が少しでもあるなら早いうちに対処しとかないと」
「対処って…?」
時刻は丁度指定した時間を少し過ぎていた。誰もいない静かな校舎裏は僅か声でも響き渡ってコンクリートの上を歩く足音さえ明瞭だ。
「あれ?ねぇ、こっちに来てるの、侑?」
「俺が呼び出しといた」
「どうして?」
「いちかがちゃんと俺のだからって分からせる必要があると思って」
「どういうこと?喧嘩とかはやめてよ」
「そんな物理攻撃は主義じゃない」
「じゃ何?」
いちかを抱き寄せるといつもと同じ香料は包み込む。繋がるときもこの香りに埋もれて甘くひとつなる瞬間は微睡むような幸福な時間だった。だけどこの場所の鼻につく湿気交じりの土っぽさは粘着質な感情を抉り出す。
「セックスってさ、家でするばっかりじゃつまらないから」
「……ちょっと待って、何する気?」
「ここでしてみようか?」
「侑いるんだよ!?」
「見せつけたらいちかの別の顔も見れるかもしれないし、侑にも再確認させないと。いちかが俺の彼女だって、ちゃんと…」
柄じゃない甘い囁きに不安に揺れる瞳さえ感情を煽られてボルテージは跳ね上がる。
「始めようか?」
俺の視界には侑の姿が映って視線が合う。唇を開いて噛みつくような強引な口づけがスタートの合図。
重ねた唇は合意のキスじゃないから歯が当たって下手くそで焦れったくてそれが余計に苛立たせる。
こんな風に感情を乱されるのは好きじゃない。