第13章 ❤︎ 岩泉先生の彼女と及川先生
「及川…。お前、どういうつもりだよ」
「どういうって、この前のさ、お詫びも兼ねて二人にデート用意してあげたんだよ」
「お前何言ってんだよ、ほんとに狂ったのか?」
「ちょっとそれは酷くない?俺なりに色々と考えたのに」
「考えてたって何をだよ」
「二人のデートプラン。……ここ温泉地なの知ってる?」
「…知ってるけど」
「じゃあさあそこにあるホテル、最近出来たスパリゾートなんだよね」
駅に着いた時には周りを見る余裕なんてなかったけど見上げればいかにも高級そうな佇まいのホテル。そう言えば新しくリニューアルしたってCMを見たかもしれない。
「予約の時間もあるしさ、とりあえず行こ?岩ちゃんも車、ホテルの方に移動させて?それまではいちかのこと、俺が預かってるから」
「は?」
「じゃ行こうか。… いちか、走って」
「へ?」
「…っ、おい!」
及川先生は私の腕を強引にひっぱるとそのまま走り出す。私は振り返る余裕もなく訳も分からないまま合わせるようにただ走ってホテルまでの道を駆け上がった。そして着いたのはCMで見た以上に綺麗で高級感溢れるエントランス。こんなところに泊まるなんて一体いくらするんだろうってくらい。
「綺麗でしょ、ここ」
「はい…」
「二人にはすっかり我慢させちゃったからね」
「ここで何するんですか?」
「それは岩ちゃんが来てからのお楽しみ。大丈夫。俺は何もしないから」
優しい笑みにまた心は揺れる。岩泉先生に会わせてくれた及川先生を信じたい気持ちがどんどん強くなってく。こんな場所でデートできるなんて夢にも思ってなかったから素直に嬉しいとさえ思ってしまって…、これ以上及川先生の顔を見ることができなかった。それからしばらくして息を切らした先生がエントランスへ到着した。