第3章 ❤︎ 結婚記念日 赤葦京治
カレンダーには“結婚記念日”の文字。
京治と結婚してもうすぐ一年を迎える。
時刻は20時を過ぎたところ。繁忙期故、今はすれ違いな日も多く、甘い生活を夢見る新妻としては少し寂しくもあった。でも充実感に満ちた頼もしい背中に我儘なんて言えなくて一か月後に迫った記念日を一緒にお祝いをすることができるのだろうか…。それが今の私の悩みだったりする。
「京治、今日、知ってるよね」
「うん、ちゃんと分かってる」
「せっかくうちに来てくれるんだから早くできるだけ帰って来て」
「俺もそうできるようには頑張るから」
「何か食べたいものある?」
「それはいちかに任せるから。あの人は肉があれば喜んでくれる」
「お肉…、なるほど…。了解」
「じゃ、悪いけどもう行くから。あと、よろしく」
「あ、うん。気を付けて」
余裕のない笑顔、お見送りのキスもなし。
「まだ新婚っていえる期間なんだぞ」
独り言が虚しく消えていく。そういえば最後にしたのもいつだろうか。胸の中はもやもやしたままだけど京治の抱えている責任感やプレッシャーを考えるとこれ以上何も言えなかった。