第13章 ❤︎ 岩泉先生の彼女と及川先生
「ったく、岩ちゃんも岩ちゃんだよね…。生徒に手を出して、いい大人なのに何やってんだろうね」
確かに私たちはまだ何も決まってなかったんだ。うまくいくだろうなんて浅はかな考えでなままで…。先生が呆れてるのも分かる。
「柳瀬さんもさ、あんまり浮かれてないで。自分の将来なんだから」
「…すいません。それは分かってます」
「俺からしたら単に受験から逃げたくて結婚とか甘い夢みてるだけな気がする。厳しいことをいえばそう見えるんだよね。本来なら岩ちゃんがちゃんと指導してあげなきゃいけない立場なのに」
先生は及川先生よりもずっと私の進路を心配してくれてた。大学行ってからでも遅くないだろってずっと言ってくれてたし…。でも、私がそれじゃ嫌だった。
「先生は進学しなくていいのか?って今でも聞いてきます。…でも私は進学する気はないんです。勉強だって好きじゃないし、仮にこのままどこかの大学に進学したとしても続かないような気がします」
「……、ま、進学する気のない子を進学させたところで意味はないか」
「…そう思ってます」
「後悔しない?」
「しません」
「本当に?」
「はい」
「いつでもやり直せるとか簡単に考えてるんならその考えは間違ってる」
「それでもいいです。後悔しません」
先生からの真剣な問いに心はザワついた。進学する気なんて全然なかったのに、一瞬でも決意がグラつきそうになって声は震えてる。先生からの真っ直ぐな視線を逸らすことができない。
「………次の、三者面談の時までに、両親の承諾を得てちゃんと話しに来ます」
今はそう伝えるだけで精一杯だった。
「……そう。………うん、分かった。じゃあまた話がまとまったら俺に教えて?」
「…はい」
「柳瀬さんがさ、本気で岩ちゃんを慕ってるのは分かったから。…ま、これからも頑張って」
顔をあげると及川先生はさっきとは打って変わって穏やかに笑っていた。正直、怖いって一瞬感じたけど私がどれだけ本気なのかを試してたのかな…。ひとつ息を吐きながら胸をなで下ろす。