第11章 ❤︎ 年下男子の好機 佐久早聖臣
結局その後は朝まで一緒に過ごしてしまった。一度だけじゃ足りなくて狭い空間で何度も抱かれて朝焼けの淡いオレンジ色に染まっていく頃には起き上がる気力もなかった。聖臣の腕に抱かれたまま微睡み、また波音が遠くから聞こえる。
「そろそろ帰る?」
「……もう少しこうしてて」
「分かった。…今、何か考えてる?」
「5歳差の現実…。若いと容赦ないんだなって」
「たった5歳だと思うけど?」
「聖臣からしたらね……あー、聖臣の家のおじさんおばさんに怒られちゃうかな?年下の男の子に手出しちゃったし」
「それはない」
「どうして?」
「俺がいちかのことを想ってるのなんてとっくにバレてる」
「でもそれは昔の話でしょ?」
「今も変わらない」
「もっと早く言ってよ」
「俺が子供過ぎて言えなかった」
そんな大人みたいな台詞、狡いよ。もし同年代だったら“私たち、付き合うの?”って簡単に言えるのに現実を映すルームミラーはシビアで口を噤んで胸の内に仕舞い込む。
「ちゃんと迎えに行くから」
「私が何考えてたのか分かるの?」
「このまま離す気はないから」
「30手前の女にそんなこと言うと重くなっちゃうよ」
「手が届かなかった頃よりはいい。ずっとこうなりたいって思ってた」
「なら後悔しない選択をしてね」
「後悔しないしいちかに後悔もさせない」
腕の中で聞いた言葉は、これからの二人をずっと繋いでいく言葉。
「愛してる」
ぽっかりと空いていた場所に新しいピースがはまってそこから温かな感情が溢れてくる。
薄く開いた唇に甘いキスが降りてきて口付けを交わす。この先にある未来を聖臣と一緒に信じようとそう思った。
fin.