第11章 ❤︎ 年下男子の好機 佐久早聖臣
“別れようか”
それは彼と付き合って5年を迎えた時のことだった。私ももう適齢期。いつかは彼とそうなるんだろうなって疑ってもなかった私を待っていたのは期待大外れの一方的な結論だった。
五年間の重みに対して“別れてほしい…”なんて選択肢のない一言だけ。あまりのショックとそれ以上聞いてはいけない雰囲気に私も“分かった”と受け入れてしまって、5年も付き合ったとは思えないほどあっさりとその場でさようならだった。
つい最近まで仲だって悪くなかったし喧嘩もなかった。
彼の事をちゃんと理解してるつもりでいたのにどうして?
私の何がいけなかったの?
もしかしたら彼は誰か他の人に心変わりしてしまったんだろうか。
別れた後になって今更になって後悔が押し寄せてきて、胸は苦しいくらいにズキズキと痛む。別れを受け入れてしまった現実に体から力が抜けていく。ベッドになだれ込んで見上げた天井は次第に歪んでいってどうしようもない寂しさだけがこみ上げてくる。
頬に涙が伝っていくのを感じながらそっと目を閉じた。
それから二週間後、私は思い切って10日の有休を取った。思えばここ2年ほどは実家にも帰っていなかった。環境が変わればって僅かな期待だけを持って抜け殻みたいな体を引き摺り懐かしい場所へと向かった。