第9章 ❤︎ 真夜中のプロポーズ 澤村大地
「それは妹ちゃん弟くんが許してくれないだろうね」
「俺だっていちかとの時間、大切にしたいし。卒業したら今みたいに毎日学校で会うってこともできないし」
「不安?」
「そりゃな…、俺も色々不安はあるよ。先に社会人になるいちかにちゃんと追いつけるかって……。4年の壁はでかいよ」
「大丈夫だよ。だって私の恋人はあのバレー部のキャプテンなんだもん」
「いちかが俺に会いたいって思ってくれる時も、俺が会いたい時も会いに行く。絶対に放したくないから」
「めちゃくちゃ愛されてない?」
「知らなかったのか?」
「狡いって。いつも言わないのにこんな時だけそういうこと言うのダメだよ。泣いちゃうじゃん」
「それくらいは受け止められるよ、俺は」
「格好いいね。大地君は」
簡単に“受け止められるよ”なんて台詞言えちゃうのは大地君くらい。なんて人に好かれちゃったんだろう。
「あ、一つ言っとくけどこれから二人の時間が増えるのは嬉しいけど、でもお手柔らかにね」
「それはいちか次第。……俺の理性崩すの上手いから」
その言葉がなんだかうれしくって腕の中でクスクス笑ってしまった。
「俺も急いで追いつくから」
「……うん」
「待ってて、今はそれしか言えない」
「その時は迎えに来てね。もし迎えに来てくれなかったら私の方から迎えにいくから」
「頼もしいな」
「この先も大地君への想いは変わらないだろうから」
「それなら先に言っとく…」
「え、何?」
「俺が大学卒業したら、結婚しよう…」
「私、まだ学生なんだけど」
「俺も」
「………ねぇ。明日、スガ君に自慢していい?」
「絶対ダメ」
「世界中の人たちに自慢したい」
「心の中だけでな?」
「待って、嬉し過ぎて今夜眠れないかもしれない」
「もう一回するか?」
「それは絶対無理」
「じゃあ、眠れなくてもちゃんと寝ろよ」
「うん…。わかった」
大地君の体に身を預け、前髪に触れた唇に目を閉じる。
「先に左手の薬指、予約しとくから」
「はい。大地君限定で承りました」
fin*