第9章 ❤︎ 真夜中のプロポーズ 澤村大地
目の前がくらくらして体は宙に浮いているような感覚が断続的に襲って、普段は賑やかなその場所はしんと静まり返って私の湿った声が響いていた。
「大地…君っ、ね、待って」
「待たない。…というより、待てない。無理」
「…ゃ、……ん」
いつもと変わらない優しい眼差しで始まって安心感に包まれていたはずの時間が一方的な愛撫に支配されている。軽く二、三回はイカされてしまっているのに、両脚の中心に顔を埋めて滴る愛液を丁寧に舐めとっていく。舌先で転がしていた突起を吸い上げる刺激だけでまた体がきゅっと熱くなって一際大きな声が上がって、浮遊感に包まれて視界が歪む。
「………イッた?」
余韻に震える体を抱き締めて確認するような言葉に僅かに頷いた。
「ごめん…。ちょっとしつこかったよな」
大切に扱うように髪の毛を撫でる指先に触れるように唇を這わせる仕草と素肌から一定のリズムで触れる鼓動に緊張が解れて鼻をすんと啜る。
「うん……。なんで止めてくれなかったの?」
「俺の我儘」
「……え、我儘?」
「家に俺といちかだけって滅多にないだろ?」
「そういえば、初めてした時以来かな?…もう一年くらい前だよね」
「初めての時は俺も全然余裕なかったしその後だっていいところで邪魔されたり、声出せなかったり、そんなばっかだったからな…」
「それは仕方ないんじゃない?きょうだい多いし、みんな大地君のこと大好きだし」
「嬉しいけどな。でも俺としては彼女との時間も大切にしたい」
「今日は声我慢する必要もないしいちかの声も表情も全部、独占したいってずっと思ってた」
「そんな事思うんだ…」
「だって俺も男だし」
「普段、紳士ぶってるのに?」
「紳士ってわけじゃないけど、なんというか、……示しがつかないからな」
「私の前ではキャプテンじゃなくていいのに」
「そうだな…」
「でも、そういう大地君が好き」
「………ん」
私からの言葉は想定外だったようで“ありがと…”と照れ隠しするように肩に顔を埋める。短くてちくちくする髪の毛をゆっくりと撫でながら大地君の匂いに包まれる。