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(R18) kiss hug ❤︎ HQ裏夢

第72章 結婚するまで帰れません(1) 岩泉一


戻った時にはちょうど撮影が終わっていた。スタッフが俺を見つけると走り寄ってくる。

「えーと、次撮影の岩泉君ですよね?」
「あ、はい」
「お願いがあるんだけど花嫁さんをお姫様抱っこできますか?」
「はぁ?」
「四人の中で一番筋力ありそうに見えたから。…できますか?」
「そりゃ…、できないことはないと思うけど」
「じゃあお願いします!」

確かに四人の中じゃ一番筋力だけはある。それに他の三人はせいぜい腕を組むか手を繋ぐだけのカットだったし結局のところ悪い気はしない。俺も単純だよな…、と自分でも呆れつついちかの隣に立った。

「じゃあ次のカットはお姫様抱っこでいきまーす」
「え?お姫様抱っこ!?誰が!?」
「俺」
「なんで!?断らへんかったん?」
「他の三人は非力そうだから俺しかいねぇんだと」
「そんなん私の方が無理かも」
「なんでだよ」
「だって、重いから」
「よく言うわ…。ちっこくてほっそい体してんのに」
「でも…」
「ほらさっとやって撮影終わらせるぞ」

挙動不審なままのいちかを抱えた。相変わらず軽い体をマトウふわりとした衣装が触れる。おんぶしたことはあったけど、こんな風に近距離で顔を合わせるのは初めてかもしれない。心の中で“落ち着け”と何度も言い聞かせる。

「ごめん、どうしよ…」
「なんだよ」
「嬉しくて泣きそう」
「撮影中だろ?」
「…うん、でも」
「泣くな。ブスに写るぞ」
「でも…」
「せっかくなんだからちゃんと綺麗に撮ってもらえ」

思わず“綺麗”と口にしてしまった。セットの外では及川含む外野がうるさい。けどんなことどうでも良かった。この瞬間だけはいちかを女として見て、俺だけのものにしておきたい…、そんな感情が確かにあった。
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