第72章 結婚するまで帰れません(１)　岩泉一

「信介！」

聞き慣れた声に視線を移すと満面の笑みで駆け寄ってくる懐かしい姿。離れて三ヶ月、ちょっと見ぃへんかっただけやのにもう何年も会ってなかったみたいに感じる。

「ごめん、待たせて」
北「そんな走ってこんでええのに。久しぶりやな」
侑「いちかサァーン！めっちゃ会いたかったぁぁ！」
治「お久しぶりです」
「ツム君とサム君やーん！ああ、めっちゃ会いたかったぁ。…え？なぁ二人ともまた背伸びたんとちゃう？」
侑「伸びましたよ。けどあれ？いちかさん、なんかちっこくなりました？」
「なってへんから。元々チビなだけやし」
治「全然変わってへんですね」
侑「高校入ったら一緒におれると思ってたのにおらんようなるし、今回はいちかさんを連れ戻しに来たんです俺ら」
「もう何言うてんの。地元出る時に言うたけど私、結婚するまで帰らへんよ？」
侑「知ってますけど、時間も経ったし俺らのに会えんで寂しくて気も変わってる可能性もあるかなぁって」
「ないない、それはない」
北「ほな、聞かせてもらおうかな。三ヶ月あったんやしもう進展あったやろ？」
「うん、付き合ってる……って言いたいけど、実際はまだ友達以上…、くらいにしか進んでへんの
治「え？地元であんだけモテまくってた先輩が？」
侑「絶対嘘やん。俺、いちかさんに好きとか言われたら秒で落ちる自信しかない」
「それだけ相手が強敵なん。でも実際会ったらもっと好きになって、また一から片想いしてる」
北「ほな、まだまだ進行形ってとこか？
「そういうこと。もうちょっと待ってて。絶対好きになってもらうから」
侑「もうええやん、帰ってきて俺らのマネやってくださいよ」
治「俺は応援しますけど、でもいつでも帰ってきてください」
「みんな帰れ帰れって酷いなぁ。今日は観光しにきてんやろ？」
治「そうそう」
「ほなとりあえず場所移動しよ？今日も暑すぎやって」