第72章 結婚するまで帰れません(１)　岩泉一

んで、これは後日談。めざとい及川は俺の新しいシューズにもすぐ気が付いてまたウザく絡んできた。

「あれ？そのシューズ買ったの？」
「いや、誕生日に貰った」
「へぇ、そうなんだ。岩ちゃんには似合わないけどやっぱ格好いいな」
「似合わないは余計だ」
「ごめんごめん、羨ましくてさぁ。…俺も来月誕生日だしお母ちゃんに強請ろうかな」
「そうすれば？誕生日くらい買ってくれんだろ？」
「シューズといえばいちかちゃんもお兄ちゃんに買えたかなぁ、プレゼント」
「さぁな。買えたんじゃねぇのか？」
「だといいなぁ。ああいう何気ないことで俺に相談するってことはもしかしたらワンチャンあるのかもね。これからも何でも相談してって言っとこう」
「お前も諦めの悪い奴だな。……ま、頑張れや」

いちかに上手く利用されてるってことも知らずに幸せな奴だな。俺も優しいからあえて言わねぇけどな。



新しいシューズで気分もいい。外はもううるさいくらいに蝉が鳴き始めていた。もうすぐ夏休みは目前だった。そしてこの夏は俺にとっては忘れられない夏になった。


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