第72章 結婚するまで帰れません(1) 岩泉一
確かに柳瀬は俺のためだけにこっちにきたし知ってる限りではメンタルは相当強いと思う。でも昨日の夜の横顔が今もずっと引っかかるしどうしたって消えねぇんだ。
「気にしてない素振りしてても女の子だしね。しかも転校してきたばっかで慣れない環境なのに俺が無理やり誘ったから」
「でもすごく助かったよね、いちかちゃんいたから」
「うん。だから次会った時はちゃんと謝って俺らだけで打ち上げするってのもありだな」
「まっつんそれいい!そうしてあげようよ!ねぇ岩ちゃん…ってあれ?どこい行くの?」
「……便所」
「…じゃあ戻ってくるついでにハラミ大盛りお願い」
「結局食うのかよ」
「こうなったらいちかちゃんの分まで食べてやるんだから」
「だからズレてんだよ、お前は…」
席を離れて俺まトイレではなく溝口コーチのところに向かった。このままあいつを一人にしておきたくないし今日のことだって謝ってない。事情を知っている溝口コーチは快く承諾してくれた。
外に出ると夕闇が迫っていた。焦る気持ちの拍車がかかる。どこにいるのかも分からない。とりあえずあいつのいそうな場所を手当たり次第に探した。