第72章 結婚するまで帰れません(1) 岩泉一
あれ?俺今誰と喋ってんだっけ。ちっちゃくて華奢な体からは想像できないこの威圧的なオーラ。そういやうちのじーさんが死ぬ間際に言ってたっけ…、“全人類、関西人には歯向かうな…”って(あ、じーちゃんまだ生きてるわ)
「どうなん?」
「えと…。め、っちゃ食べたい…です」
「せやろ?」
「………はい」
「ほな協力してくれるよな?」
「あ…。はい、もちろんです」
「おーきに。期待してるから」
俺の顔を真っ直ぐに今まで見せたことない顔でにっと笑った。柳瀬ちゃんのこと、タイプとかそんなこと全然に思わなかったのに見惚れてしまいそうになった。
「……なんか別人みたいだな」
「隠してんねん。やから基本的に関西弁使わへんの。つい関西弁やとベラベラ喋ってしまうから」
「でも今の方が自然じゃない?」
「せやけど、まだ恥ずかしいねん。嫌われたら嫌やし」
「そう?俺にはすげぇ新鮮に映るけど」
「でもまだ自信ないし好きなんも一方的なことやし」
「岩と出会ってまだ一ヶ月も経ってなくない?それでそんだけ好きってある意味すごいけど」
「ちゃうねん、ここ最近のことやないの。好きになったんは」
「そうなの?」
「ま、ええやん、そんなんはどうでも。それよりもう一回確認なんやけど、元カノが一君のこと振ったんやな?」