第6章 ❤︎ 侑に振られた責任を治にとらせる話 宮治
達した後のなんとも言えない空虚感と徐々に現実に戻される感じが体の体温を奪っていく。なのに冷えた体を包んでくれたのは治でその腕はとても温かくて大きくて溶けていっちゃいそう。
「つい30分前やこんなことになるとは思わんかったわ」
「治……、ごめん」
声色が優しくて、それだけで泣いてしまいそうだ。今更何を言っても遅いかもしれないけどとんでもないことしちゃったんじゃないかって後悔が押し寄せる。
「もっと自分を大切にせぇよ」
「……そうだよね。治の言う通りかも」
「ほなけど、こうなった以上はちゃんと責任は取らなな」
「責任?」
「俺と付き合うか?」
「……なんで?」
自分でも間抜けな声だと思った。とても正気だと思えないしこんな展開おかしい。しちゃった勢いでネジの一本でも外れちゃったかな。
「私に同情してくれてるのは嬉しいけど、急展開過ぎない?」
「同情とかそういうんやないけど、なんとなくいちかをこのまま一人にさせたないなと思って。なんか分からんけど」
「無理が過ぎない?」
「俺やってそう思とるわ。恋愛経験もないのに」
「でも私の事、好きとかじゃないでしょ?」
「好きとかその辺はよう分からんけど、今、言うたやん。一人にさせたないって。それが理由にはならんの?」
「ほんとに?」
「嘘は言わへんて。恋愛の仕方はいちかが俺に教えてくれたええやん。緒にいる理由やってこれから探していけば?俺は侑と違って証明問題とか得意やってん」
「証明問題って…。ねぇ、そんなに簡単に言っていいの?」
「別にええんちゃう?勢いやって必要やろ?」
「でも…」
「俺の気が変わらんうちにちゃんと返事しといた方がええで?」
それだけの言葉がなんてこんなに強力に引き付けられるんだろう。あまりにも真っ直ぐで一瞬引っ込んだ涙はまたじわっと溢れてくる。
「……こんなん泣いちゃう」
「…ほな、落ち着いたら返事してや?」
「うん…」
「もう、泣かんでええから…」
治の腕の中でこの感情が全て流れきれば、好きってもう一回ちゃんと伝えて真っ直ぐに治だけを見てずっと変わらない想いを抱いていたい。動き始めた好きという想いが、目に映る世界の色を変えたように思えた。
fin*