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(R18) kiss hug ❤︎ HQ裏夢

第72章 結婚するまで帰れません(1) 岩泉一


桜の咲きほこる校庭にはクラスメイトの姿もちらほらと見え、皆、クラス割の張り出されたボート前へと向かっている。その中で周りをきょろきょろと見渡しながら明らかに迷っている様子の見覚えのある後姿。あいつより10分くらい後で家を出たというのに俺のこういう時のタイミングの悪さは自分を恨みたくなるレベルだ。結局そのままにしておくこともできず、結局はこうやって声を掛ける羽目になる。

「あっちな…」

後ろから声を掛けると振り向いた途端に驚いた顔をして俺を見た。そりゃ声を掛けるなっつったのは俺の方だし。

「あ、ありがとうございます」
「皆同じに見えて二年生がどこに行けばいいのか分からなくて」
「生徒も多いし無駄に広い学校だからな」
「…ですね。ちゃんと下見しておけばよかったです」
「あとは適当に誰かに聞けよ。…じゃあな」
「はい。ありがとうございました」

朝みたいな大袈裟な素振りも見せず、柔らかく微笑んで軽く会釈をする。まぁこれくらいなら自然に見えるしこいつもちゃんと分かってんだな、と安心したのも束の間で、張り出されたクラス割の表に俺は唖然とした。

2年3組の欄には俺の名前、と少し下の方に“及川徹”……、そして見てしまった“いちかいちか”の文字。同じ学校、同じクラス……、俺の運、16歳にしてもう尽きてんのか……。
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