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(R18) kiss hug ❤︎ HQ裏夢

第72章 結婚するまで帰れません(1) 岩泉一


「バレーしてる時は格好いいんだろうなぁ」
「んなことねぇよ」
「あ、もちろん部活を見に行ったりしないので安心してくださいね」
「当たり前だ。学校でもややこしくなんのは御免だからな」
「はい。了解です。…あ、そうだ」
「なんだよ」

何かを思い出したかのように慌てて部屋へ戻る。中は相変わらず段ボールが重ねて合って、でも前と違っていたのは壁に掛かった青城の制服。地元に帰って欲しいって願いも虚しくもう避けられないんだなって俺はため息をついた。

「一さんとお母さんたちにお土産買ってたんです」
「んなもんいいよ」
「でも次帰るのはいつになるか分からないし。食べ物なら受け取ってもらえるかなって」

“よかったら…”と差し出したのは洋菓子の袋。冷蔵庫に入っていたのかひんやりとしている。

「このレーズンサンド、結構、いけます。冷やして食べるのもまた美味しいんです」

レーズンサンド……。甘いもんは嫌いじゃねぇし、そもそも食いもんには罪はない。食いもん無駄にすんのは俺の道理に反する。

「……んじゃ、まぁ、折角だしもらっとくわ」
「はい。ありがとうございます」

俺が受け取るとまた嬉しそうに笑う。普通に話したら全然普通の奴で会話も面倒臭くはない。まぁ及川みたいなの相手にしてるから余計にそう思うのかもしれねぇけど、初めて会った時みたいに変に着飾る必要なんてねぇのにな…。

「んで?」
「え?」
「なんで泣いてたんだよ」
「あー…、バレちゃいました?」
「バレバレだよ」
「昨日、地元の友達にお別れを言ったんです。私、前の高校で運動部のマネージャーもしてたし突然だったから驚かれちゃって。言ってなかったから当たり前だけど」
「だったら無理してこんなとこ来なくていいのに」
「でもこれが私の運命だと思ってます。一さんに会ってその瞬間に私の恋は確定しました。それに私が両親についていく選択をしてもお別れはしなきゃいけなかったんです」
「……そりゃそうだわな」
「最後は背中を押してくれたんで…。さっきはそれを思い出して……ってこんなところ見られちゃうなんて思ってなかったから。ごめんなさい」
「俺に謝っても仕方ねぇだろ」
「ですね」
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