第71章 ❤︎ 彼女のお世話係な彼氏岩ちゃん
乱れた髪を直して服を着せ直して、足には湿布も貼り直した。〝もっといて〟と渋るいちかをベッドに寝かせ、俺も自分の荷物を持つ。
「ちゃんと安静にしてろよ。俺は帰るから」
「でもまた汗かいちゃった。髪も洗えなかったし」
「あとはおばさんにやってもらえ」
「そうだよね。一、帰っちゃうもんね」
「明日も学校で会えんだろ」
「でも寂しい」
「昼休み、時間作るから」
「ほんと?」
「見張ってねぇと無理しそうだし」
「子供じゃないんだけど」
「さっき抱っこ抱っこつってたのは誰だよ」
「私」
「だから明日も見張っててやる」
「ふふっ、ありがと」
「また明日な?」
「うん。じゃあ最後にキスして」
甘えるような視線で俺を見つめた後、ゆっくり目を閉じ唇をツンと尖らせる。吸い寄せられるように俺も唇に重ねる。〝早く治せよ〟そんなことを考えながら…。
梅雨時の湿った空気が鬱陶しい午後20時の帰り道。せめて空気くらいカラッとしてくれていたら、不完全燃焼の自分も諦めがつくのに。
「今夜は眠れねぇな」
いちかの感触も匂いも消えない。けど、いちかがまだ近くにいるようでそれも悪くはない。いちかが誰よりも大切で可愛い存在はたった1人だと今日も新たに胸に刻まれた。
fin*