第6章 ❤︎ 侑に振られた責任を治にとらせる話 宮治
≫夢主side
私が治を意識し始めたのは同じ顔した侑の度重なる浮気が原因でもなく、何か特別なことがあってふとした瞬間に心奪われたわけでもない。
ただ席が隣になって、女子受けするイケメン面と何を考えてるのか分からない表情がいつの間にか頭の中に記憶されていて、気が付いた時には目を追っている自分がいた、ただそれだけの話だった。
テスト期間中、静まり返った部室の前。運よく現れるなんて確信はなかったけど なんとなく会えるような気がしていた。紙パックの甘ったるいジュースを口に含みながらじっと見つめた先には私の密かな想い人が現れる。
「宮治…」
「ん?」
「やっぱ来た」
「え?」
「なんか来るような気がささたんだよね」
「あー。…えっと、ツムの彼女やんな?見覚えあるような…」
「柳瀬だよ。一応、同じクラスなんだけど」
「ああ…、通りで。なるほど」
確かに一方的に見つめてばっかで話したこともないし、眼中になかったのは認めるけど、“なるほど”なんて失礼すぎる。こういう時って侑の方が対処は上手いしさり気ないフォローもムカつくくらいに気が利いてた。同じ顔しててもこっちは恋愛下手って噂本当だったんだ。
「ツム待ちなん?」
「違う。今日は治待ちなの」
「俺…?」
「そう。侑に振られちゃったからもう関係ないし」
「俺やって関係ないねんけど…」
「双子なんだから少しくらいは関係あるでしょ?」
「ほな、あいつ、今誰と付き合ってんの?」
「知るわけないでしょ?今、時間あるなら話くらい聞いてよ。ねぇ中入っていい?」
「…いきなりそんな事言われても」
「あからさまに嫌そうな顔しないで」
「嫌っちゅうか…、あ、ほな北さん呼んでええ?俺だけじゃ解決が無理な場合も……」
「北先輩関係ないじゃん。治だけでいいよ。むしろ治がいいし」
「なんで?あいつの代わりに俺に復讐するつもりなん?」
「そんな事しないよ。でも侑に言えなかった愚痴くらい付き合ってよ」
「面倒くさいけど、そんくらいなら…、まぁ…」
乗り気じゃなくてもそんなのどうでもよかった。二人きりになれたらこっちのもん。脅したわけじゃないけど硬い表情のままドアを開けてくれた。