第67章 ❤︎ 治店長とバイト店員の初体験 宮治
「これ、夢やったら辛いな」
「なんの心配してんねん、」
「治君、満足してへんのちゃう?」
「なんで?」
「中途半端で終わってしもたから」
「俺にはもう十分すぎる。久々に満たされた気がして今も信じられへんねん」
「じゃあ、一応確認なんやけど、私って今日から治君の彼女でええの?」
「俺はそう思てる」
「ほんまに?」
「成人してるいうても20前の子に手出してしもたんやから結婚を前提に、ってくらいの覚悟はある…。俺はな?」
「じゃあ私、治君と結婚する」
「えらい即答やな」
「だって夢やったもん」
「ずっと俺のこと想っててくれたんやろ?」
「そうやで。諦めようと思ったこともあったけど」
「ありがとな…。待たせてごめんな」
「いいの。クリスマスの奇跡、起こったから」
「そうやったな…。今日はクリスマスやもんな」
「ねぇ治君」
「ん?」
「私、幸せ」
「そらよかった」
「でもね、緊張が解れたら眠くなっちゃって…」
「頑張ったしな」
「このまま少しだけ眠ってもええ?」
「ええで?朝まで寝てもええで?」
「だめ。時間が勿体無いから。少ししたら起こして?」
「ん、分かった」
「絶対起こしてよ。甘やかさないでね」
「分かった」
「絶対やで」
「分かった。もう眠そうやからもう目閉じ…」
「うん…」
「ほな、おやすみ」
「おやすみ、治君」
俺を見つめる目もとろんとしている。シーツにくるまって目を閉じてるとすぐに規則的な寝息が聞こえてきた。静かになった部屋の窓からは街のイルミネーションが映る。無垢な表情をして眠るいちかの寝顔を見つめながら明日のことを考える。
「明日は休みやし、指輪でも買うたろかな」
気が早いかとも思うけど今まで待たせてしまったことを考えると何か特別なことがしたいし、いちかは喜ぶに決まってる。どんな表情をするのか、どんな風に喜んでくれるかを想像するだけで楽しみに思える。
「俺を本気にさせたんはいちかやから。ずっと付き合うてな?」
いちかの存在といちかに対する甘い感覚が自分の思考の中心に溶け込んできて、ずっとそこに在ったかのような不思議な感覚に一人酔いしれる。これが幸せの正体なら今日だけはクリスマスの奇跡ってやつに心から感謝したい。
fin.