第12章 春疾風
実弥side
翌朝
早々に出かける花耶を見送り、早速庭先での稽古に取り掛かる。
昨晩、花耶を悪夢で苦しめた鬼が堪らなく腹立たしい。
胡蝶や花耶には、怒られそうだがこんな傷でいつまでも休んでなどいられない。
ビュッビュッと木刀を振るう音が庭に響きわたる。
昼も近づき、木刀をおろした実弥の肩に鴉がとまる。
「サネミ、ゲンキカァ?」
「おうよォ。」
返事をしながら、鴉の喉を撫でる。
「鬼の情報あったかァ?」
「キタのマチに不穏(フオン)なウワサアリ。」
「了解。」
(ともかく今夜から夜警再会だなァ。)
今日は花耶と店でおはぎと抹茶の約束。
夜警に出るとか言ったら、花耶はきっと不安な顔をするだろう。
(爽籟に呼びにでも行かせようか…)
相棒を撫でながらそんな邪な感情が浮かぶ。
「花耶早く帰って来ねぇかなァ…。」
そう言い合えるかどうかのうちに鴉は、サッと飛び立って青い空に消えていった。
(爽籟のヤツ、突然どこ行きやがったんだァ?)
あまりの鴉の素早さに実弥は首を傾げながら、再び木刀を振るった。