第2章 お怪我はありませんか
詰所に帰ると荷下ろしや片付けをしながら、自然と今日の任務の話になる。
「花耶ちゃん、不死川様の手当てしたのよ〜!」
と先輩は他の隠したちに嬉しそうに報告している。
(さっきからニヤニヤしてるし、言いふらしてるし、何…?やっぱり、無理やり手当てしたのマズかった?)
現場で離れて作業していた隠したちが、
「不死川様そんなにお怪我されたのですか?」
と先輩に聞いている。
「ううん。全然!不死川様からしたらただのかすり傷よ〜」
「かすり傷!?」
とみんな驚いている。
(今日の鬼強かったんだ。柱の不死川サンってやっぱり強いのね。)
なんて考えていると、続けて
「かすり傷で、手当てさせていただけたの!?触らせてくれるなんて!」
(ん?驚くところソコ?やっぱり、柱の手当てなんて異動してきたばかりの私がしちゃダメだった…?)
私は、不安が募るばかりで、話にもついていけない。先輩は、相変わらずそんなことにはお構いなしで、
「そーなのよ。私らには触らせてくれないくらいの。なのに花耶ちゃんには、おとなしく手当てされてたの!」
先輩は、珍しいものを見たんだと自慢するように目をキラキラさせていた。
(それにしても、不死川サンは、“怪我をした野生動物か何かか”という言われよう。想像するとちょっと可愛らしい。)
「ということで、花耶ちゃん!これから、不死川様のお手当担当は花耶ちゃんってコトで、よろしく!」
「ふぇ…!」
会話についていけず、可愛らしい不死川サンを妄想していた私は、突然先輩に話しかけられ、変な声が出てしまった。
(頭が全然ついていかない。)
呆然とする私を置いて、先輩は続ける。
「その分、他の救護は、私たちが重点的にするから安心して!不死川様、いつもなかなか手当てさせてくれなくて、私らちょっと手ぇ焼いてんのよ。普通に触らせてもらえるのは、隣の隊のベテラン爺さんくらい。ホント、気ぃ使う。いっそ、失神してくれてた方が楽。あ、今のはナイショね。あ〜、花耶ちゃんみたいなイイ子が来てくれて私ゃ幸せモンよ。」
「は、はい…」
なんだかんだ先輩に丸め込まれ、何故か私は“不死川サン手当て担当”となったのだった。