第9章 春を待って
ー実弥sideー
ずいぶんと蕾が膨らんだ桜並木を歩く。
「飯、食いに行かねぇかァ。」
俺は、徐ろに花耶に話しかけた。
半ば面白がっていたものの折角胡蝶が作ってくれた機会だ。
無駄にするほど、俺だって馬鹿じゃねぇ。
「はい、お供します。」
とかしこまって返事をする花耶。
「この前約束したろ…。仕事じゃねェ。」
と言いながら、花耶の方を見ると心なしか表情が和らいだ気がして、俺まで嬉しくなってしまう。
「定食屋でもいいかァ。」
と聞くとコクリと頷いた花耶を連れて、俺は馴染みの定食屋に入った。