第5章 素敵な人ですね
夕暮れ時
そろそろ街の外れに着くというところで、私の足はピタリと止まり、そのまま行こうとした不死川サンの羽織を掴む。
「そっち…怖い…。」
ずっと昔も感じたことのある気がする嫌な感覚。
「大丈夫かァ。」
そう声をかけてくれながら、不死川サンも足を止め周囲を探るように見渡す。
「あの端の家だなァ。気配がしやがる。」
と呟く。
(この感覚、鬼に襲われた時の記憶…!?)
もう一度不死川サンの羽織をグッと握りしめると、不死川サンは私を抱き寄せて、
「連れて来ちまって悪かったなァ…。日が落ちる前に、仲間を呼びに戻ってくれるかァ。」
不死川サンの腕の中は、心地よくてここから動きたくない。
でも、ここままじゃ隠し失格だなぁなんて考えて、不死川サンに返事をするように頷く。
不死川サンの腕が解かれていくのが名残惜しい。
不死川サンは、身を離すと私の頬に手を伸ばし古傷を指でなぞられる。昔、鬼に襲われた時の傷。
おしろいで薄くさせているし、いつもは、隠しの隊服で見えないはずなのに、初めからそこにあったことを知っているような手つき…。
ふと手を離して、
「行ってくらァ。気をつけろォ。」
という不死川サンに、
「はい。不死川サンもお気をつけて。おはぎ約束ですよ。」
と伝えると不死川サンは、
「アァ。」
と微笑んで現場に向かっていった。
その背中を少し見送ると、私は先輩たちのところへ急いだ。