第4章 おはぎを食いにー実弥sideー
ーあれから1年ー
その後俺は、花耶の事を任務の度に気にしてみたりもしたのだが、めっきり見かけなくなっちまった。鬼殺隊もまぁまぁでけェ組織だし、隠しとなりゃ顔もよく見えねぇしでなかなか探し出せない。
諦めかけていたころ、いつもはピンピンしてりゃわざわざ近寄ってもこねぇ隠しが、
「不死川サ…様!お怪我はありませんか?」
と近寄ってきた。
(この声と話し方。もしや探してた女か…)
俺が固まっていると、勝手に腕を掴んできたので反射的に、
「何すんだァ。こんなもん怪我じゃねェ」
と言って手を振り払おうとしてしまった自分に焦る。
だが、普通のヤツならここで怖がってどっかに行っちまうのに、
「いや、血でてますよ!ジッとしてください。」
と俺の腕をさらにグッと掴んで抵抗してくる。
俺は、そんな花耶に驚きつつ治療が終わるのを待つ。それに半年探してやっと見つかったんだ。治療を待つ間、何か声をかけようか必死に考えだが、うまい言葉は、見つからず結局、
「終わったかァ…」
と言うしかなかった。
すると花耶は、
「はい。傷跡きっと残りませんよ」
なんて言いやがる。
誰がみても分かる通り、俺はもう傷だらけで今更傷跡がどうのこうのというような見てくれではない。
それでも微笑みながら純粋にそんな事を言う顔に照れてしまって、
「んなァことァ聞いてねェ」
と返すのが精一杯だった。
帰りがけ俺は、よく行く小さな神社で何も話せないまま帰って来ちまった自分を責めながら、再び花耶の行方がわからなくならねェことを祈った。