第3章 おはぎはお好きですか
店員さんは、不死川サンの様子には動じることもなくニッコリ笑っておはぎを包んでいた。
(おはぎ買ったんだ)
そう思うや否や、不死川サンが、支払いを終えてこちらに歩いてくる。
店の入口で不死川サンをガン見していた私の体は自然と一歩下がり、一旦店から出て道をあける。
日頃の習慣、訓練の成果って恐ろしい。
今は、隊服を着ていない。突然、花柄の着物の女の子が、ガラが悪い人に跪いたら絶対怪しまれる。習慣のまま跪こうとする膝を咄嗟に堪えて、店を出てきた不死川サンに会釈する。
「不死川様、お疲れ様です。」
とご挨拶したものの…
(隊服着ていない私のことなど気づかないかもしれない。ただ、柱の方を無視するわけにはいかないし…)
と不安に駆られる。
しかし、不死川サンは、私が鬼殺隊関係者ということは察したらしく、
「…あァ」
曖昧に返事をしてちょっぴり恥ずかしそうに帰っていった。