第8章 Season 1 ジェラシー
「あーもー。拓も馬鹿だけど、お前も馬鹿だ。俺が帰ってこないのは、ほんとに仕事が忙しいから。出張とか結構あんだよ。今までちゃんと言ってなかったのは悪かったけどさ……」
と紘は言った。しかし、まだ手首を掴む手の力は緩めてはくれない。
「俺さー、ずっとお前にそう思われてたわけ?」
「……ごめん」
「一応言っとくけどな、俺はこの家で生活し始めてから、お前以外抱いてないし、今は慧以外抱きたいとも思わない」
と紘は、吐き出した。
「そんで、なんかあったんかよ?」
「……」
「なんもねーわけないよな?食欲がないの、俺だけのせいじゃないだろ?ごまかしてもわかっぞ?前みたいな空気になってる。空元気とか、俺には通用しねーぞ」
私はベッドに押さえつけられたまま、紘の目がまともに見れなかった。
「……んだよ、俺には言えねーの?」
「なんもないっっ」
私は目線を上げて、ついそう言ってしまった。
なんで私紘に当たってる?
「ごめん。心配かけたんなら」
私はそれだけ言うと、紘を振り払ってベッドから起き上がり逃げようとしたのだが、
「おい、待てよ!なんもないわけねーだろ?」
私の肩を掴み、今度はベッドに座らされた。
だめだ。このまんまじゃ紘にも迷惑かけてしまう。
私の目に、涙がにじんできた。
「ちゃんと……言えるか?」
肩を掴んだまま隣に座り、少し強さを押さえた声で紘が聞いてきた。
「……紘に言ったってしょうがない……」
「しょうがないかどうかは、俺が決める」
「……治さんに……」
「ばれた?」
ちがう、と私は首を振った。
「……」
「あ、そっか。そういうことか」
紘は、私が言おうとしていることが判ったのか、大きくうなずいた。
そのまま私を抱きすくめた。
「俺さー、なんか妙に今頭にきてんだけど……」
「?」
「裕は、知ってんの?」
「うん……」
「あいつはなんて?」
「……」
「だいたい想像はつくけどな。あいつ、慧にべたぼれだから……」
「!!?」
「なんだよ、気づいてないのかよ。だいたいあいつが遊びで女抱けるやつかっての」
紘は、あきれたように言った。
「本気になんなって、なんども釘さしてんだけど、やっぱ駄目だったか……」