第7章 Season 1 酔っ払い
「そういえば、ねぇ、教えてよ。何を知ってるの?」
「え?何も。あんなのハッタリですよ。人ってみんな結構隠してる事があるから、誰でもそういえば簡単に騙されてくれる。僕が慧さんを抱くための口実、ですよ。男なんてみんなそうです。自分勝手にただ、やりたいだけ」
とは言いながら、翼は、私のなかに入りはしなかった。
たぶん、本当は自分勝手ではなく私のためだけににしてくれたことなのだろう。
「うそつき」
私は、そう言いながら、少し目を閉じた。
もう、無理。
少し寝てから、部屋に戻ろう。
そう思った。
しばらくして、自然に目が覚めた。
時間は、翼が帰ってきてから2時間程度しかたっていない、ということは、私はそんなに寝ていたわけではないのか、と安心した。
翼は隣ですぅすぅと寝息を立てている。
風邪をひいたらかわいそうだと思い、タオルケットを広げて翼の身体にかけておいた。
床に投げ捨ててあった私の下着とパジャマのズボンを拾うと、身につけて、さっき持ってきた水の入ったグラスを持って部屋を出た。
1階のリビングに戻るが、誰もいない。
どうやら、まだ治さんは帰っていないようだ。
少しホッとしながら、グラスを片付けると、私は寧々や乃々の寝ている寝室に向かい、ベッドにもぐりこんだ。
私の身体はどうしたのだろう。
治さん以外なら平気で受け付けるようだ。
不思議だった。
不思議だったけど、まだ心地よい浮遊感が残っていて、そのまま落ちるように眠った。