第5章 Season 1 ふたり目
一晩が経った。
私の体調はお酒を呑んでたにもかかわらずすこぶる良くてもちろん記憶がなくなるどころか何をしゃべり何をしたのかちゃんと覚えているし、なにより身体がすごく軽い。
朝も、いつも目覚ましが鳴り始めてしばらくしなければ起きれないのに、今日は鳴る少し前に目が覚めたほどだ。
こんなにも、目に見えた変化、しかもいい方にあるのだったら、これでよかったのかもと思ってしまう。
「ママぁ、おはよー」
朝ごはんを作っていると、寧々が眠い目をこすりながら起きてきた。
「おはよー」
私はいつも通りに挨拶をした……はずだった。しかし、
「あれ?なんかママきょうこえかわいいよー」
とニコニコしながら話しかけてくる。
「ねね、いまのママがかわいくてすきだなー」
無邪気にそう笑うと、おなかすいたーとソファに寝転びごろごろとし始めた。
私は、そんなにも変わるもんか?と少し不思議に思いながらも味噌を溶き、味噌汁を仕上げた。
その後、裕や紘に会ったのだが、二人ともびっくりするくらいに普通で、違和感なくて、私一人がぎこちなくなってるんじゃないかと焦ってしまった。
もちろん、治さんはまったく気づく様子もない。
みんなを送り出し、朝の仕事が一通り終わると、順さんが乃々を迎えに来てくれた。
「乃々ー、今日はママ病院さんだから、あたしと遊びに行きましょうねー」
「うんー」
じゅんたんじゅんたーん、と乃々は順さんが座っているソファのとなりを陣取った。
「すいません、お願いしちゃって……」
とりあえずコーヒーを出しながら、順さんに言うと、
「いーのいーの。元はといえばあたしが言い出したことだし。しっかし、一晩で変わるもんねぇ、あんた今日すごいキラキラしてるわよ?」
「え……?判りやすすぎますか?」
「大丈夫大丈夫。ふつーの男は気づかないから。こういうのに気づくのは敏感な女のほうよー」
あたしは特別ね、と順さんは意地の悪い顔をした。
「……そういえば、今朝寧々にママ可愛いって言われましたね」
「あらやだ、あんなちっちゃくてもやっぱり女ね。なんか勘がいいのねー。気をつけなさいよー」
「……はい……」