第13章 Season 2 新生活
「あのっ」
私に拒否権もしくは発言権はないものかと声を発したのだが、
「なぁんか面白くなってきたわねぇ」
「僕すぐに一位になるよ?」
完全にスルーされてしまう。思わず溜息をついてしまった私に、
「もう、世間体気にせずに慧のこと好きだって思っていいんだよな?」
紘が聞いてきた。
「……世間体は気にしてください」
私が言い返すと、
「ねぇ、したい」
耳元で私にしか聞こえない声で囁いた。
びくっとして鳥肌を立ててしまった私に、反対隣にいた裕が、
「え?慧さんどうしたの?肌が……」
と私の腕を触ってくる。
「う、うん、なんでもないっ」
自分で必死になって腕をさすり、鳥肌を引っ込めた。
馬鹿紘という思いを込めて睨みつけると、
「怒った顔もかわいいぞ」
と唇を塞がれた。
「あ!!」
「うわー、こういうことも許されるんだ」
翼と裕が声を上げた。
「僕も僕も!!」
翼がテーブルを挟んだ反対側から身を乗り出してきて、どうしたらいいものか判らずに固まってしまっていた私の背中を後ろに回りこんできた祥さんが押した。
「え!?」
「ちゅー」
思わずテーブルに手をついてしまい、チューハイの缶がいくつか倒れたのが見えた。
翼の唇を受け入れながらも、頭の隅では早く拭かなきゃ、という思いが溢れそうになり、慌てて翼の唇から離れると倒れた缶を起こし、立ち上がり、タオルを取りに走った。
洗面所からタオルを持って出ると、リビングの入り口付近に拓がいて、
「慧さん、タオルパス!」
手を広げて待っていた。
思わずタオルを拓に投げると、拓はそれをリビングの向こうで座っている順さんに向かって、
「順さん、拭いちょって」
と投げつけた。
「え?何?やだっ」
順さんの声が聞こえたと思ったら拓がすかさずリビングのドアを締めた。